教育旅行年報データブック2024_S
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円安等の影響により費用がかかりすぎる。【私立 中学 語学研修】物価、運賃、燃油サーチャージ、滞在費の高騰により滞在日数が減り、これまでの活動プログラムの変更、縮小が余儀なくされてしまうこと。【私立 中学 修学旅行/語学研修/姉妹校交流】生徒の安全等を考えて宿泊ホテルを選定すると、物価高もあわせて金額が高くなってしまう。【公立 高校 修学旅行】SSHの補助があったことで価格をおさえられたが、実際には、倍以上の旅費が生じることが課題である。【公立 高校 その他研修】参加生徒数が当初の予定より少なく、生徒負担金が多くなり、学校からの引率者の参加ができなかった。【公立 高校 姉妹校交流】円安による費用の高さから積極的応募が少ないこと。【公立 高校 姉妹校交流】希望があっても費用が高いため、学習意欲の高い生徒を費用の面で連れていくことができない。【公立 高校 姉妹校交流】訪問先高校の教育委員会より、滞在中の傷害保険について日本にはない対応を求められた。【私立 高校 語学研修】感染症を発症した際に保護者に迎えに来てもらうことが難しく、回復するまで引率者が現地に残らざる得ないこと。【私立 高校 修学旅行】地元空港発着の国際線便がなく、県外の飛行場までの移動時間がかかる。【公立 高校 姉妹校交流】生徒の英語力はいつも課題となる。【公立 高校 その他研修】コロナ禍後、ホームステイの質が低下。【公立 高校 その他研修】語学学習にとどまらない付加価値。【私立 高校 その他研修】現地受入校やホームステイ先が減少していること。【私立 中学 語学研修】日頃の校務を考えると、旅行会社や保護者との連絡調整など教員の負担が大きい。【公立 中学 姉妹校交流】引率者決定が時々難しい。【私立 高校 修学旅行】経済的負担安全・健康管理語学力・旅程管理等その他 2 訪日教育旅行表-11 海外教育旅行の課題と問題点 「その他」では、教員の負担が大きいことや引率者の決定が難しいといったコメントがあった。ア 2023年度の動向について 2023年5月にコロナが5類に移行し、海外旅行に関連する制限がすべてなくなった。しかし、コロナ禍後の世界的な旅行費用の上昇、燃油サーチャージの高止まり、円安の進行などから、2023年度の海外への教育旅行の回復はコロナ禍前と比べると道半ばというレベルであった。特に、修学旅行では、修学旅行実施基準による旅行費用の制限もあり、公立高校での実施が非常に少なかったため、2023年度に実施したという回答件数が、2019年度実績調査時の約半分という状況であった。 募集型を基本とする語学研修は、2022年度の後半ぐらいからは各種の困難はありつつも、徐々に実施されるようになった。2023年度はコロナ禍前と比べると完全回復とは言えないまでも、公立も含めて修学旅行よりは回復の度合いが大きい。オーストラリアでは、コロナ禍前とほぼ同じレベルまで回復し、学校及び保護者、生徒の実施への強い熱意を感じさせるものとなった。イ 課題と今後の展望 執筆時の2024年9月中旬現在では、コロナ禍前と比して海外旅行の諸費用上昇は明らかで、世界的な旅行需要の高まりなどもあり、今後も下がる見込みが立ちにくい状況である。一方、2024年度においても、修学旅行実施基準の上限額が増額された都道府県・政令指定都市は少なく、公立学校では海外修学旅行の実施がますます難しくなっている。私立でも、保護者への費用面での過度の負担の発生や、不参加者増加に対する懸念もあり、より安く行ける方面への変更や、国内・海外コースから生徒が選ぶ選択制を検討するケースも多いと聞く。また、経費削減のための、現地での自由行動時間の過度の増加や、実施プログラムの質の低下につながりかねないという声も多く聞く。 国が発表した「グローバル人材育成推進会議 中間まとめ」(2011年6月22日)では、グローバル人材を育成するうえで、「小中高を通じて英語・コミュニケーション能力等の育成を図るとともに、児童・生徒の国内外における異文化体験の機会を充実させることが重要」と記載されている。32  教育旅行年報「データブック2024」初等中等教育における海外教育旅行は、まさに異文化体験の機会であり、非常に意義のある体験行事といえる。 東京都港区が、区立中学校の修学旅行の行先を令和6(2024)年度からシンガポールに変更し、その差額を補助する、というニュースが話題になった。他の自治体でも、海外教育旅行に補助金等を独自に導入する動きがある。また、学校が実施する海外教育旅行に際してのパスポート発行手数料の無料化や、公立学校での海外修学旅行の費用上限のあり方についても、補助金等と併せて検討していく必要があるだろう。国際的に活躍できる「グローバル人材」を我が国で継続的に育てていくために、海外教育旅行の実施率が少なくともコロナ禍前のレベルに戻ることのできる環境や状況が、できるだけ早く整うことを強く願う。 当調査は、訪日教育旅行の定義を次の通りとして実施し回答を得た。・ 主として、学校単位で引率者が引率し、訪日する団体の旅行。・日本の学校との学校間交流を実施。・オンライン交流のみの場合は、含めない。 2020年初頭からのコロナ感染拡大により、海外からの訪日旅行がほぼできなくなったことから、今回の調査における比較対象は、コロナの影響が出る前の2018年度調査、あるいはコロナの影響が年度末に出始めた2019年度調査のデータとした。ア 海外からの来訪校 訪日教育旅行については、日本への入国要件が多少和らいできた2022年秋頃から徐々に来訪学校が出始めた。そして、2023年4月末には日本入国時のワクチン接種証明書等の提示が不要になり、日本からの海外教育旅行に比較して、早いペースで回復基調となった。 2023年度中に訪日教育旅行の受入れありとの回答があった学校は、高等学校112校、中学校60校、合計172校となり、中学・高校合計で11件の受入れ報告しかなかった前回調査より大きく増加した(P26・表-1参照)。年度末の3学期にコロナの影響があった2019年度では、高等学校163校、中(2)2023年度の総括と今後の課題・展望(1) 訪日教育旅行の概要

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