教育旅行年報データブック2024_S
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安全・健康管理教育的効果経済的負担旅行先・旅程その他コメント急な悪天候により、目的地を変更することが非常に難しい。体調不良者が大量に出た場合、引率者だけで対応することが困難。【中部・公立】現地で感染し、離団する生徒が複数人いたため、引率の人員が不足し大変だった。【東北・公立】飛行機を使う場合、インフルエンザ感染者が搭乗できない。【中国・公立】実施時期が8月末で、東北地方とはいえ暑さは厳しいものがあり、外部での活動では熱中症の危険性があった。また、インフルエンザの感染も拡大し、途中の離脱や医療機関受診等の対応に追われた。【中部・私立】国内5日は長く、体調不良者がでてしまった。【関東・私立】コロナの影響により海外修学旅行を変更し、前年度(南九州)、次年度(海外)と旅行先が異なるため、学年間での情報交換があまりできなかった。【九州・公立】中学校時代の修学旅行先と同一の場合、教育効果が薄れてしまう。【関東・公立】企業訪問等の予約が希望通りにできない。【中国・公立】物価高騰の中、予算内でどれだけ学習、体験等を充実させられるか。【関東・公立】探究学習の視点をどう採り入れるかが課題である。【北海道・私立】在籍数が減少しており、費用負担が増してきている。行先や泊数の変更を考えていかないといけない。【関東・公立】3泊4日で実施したかったが、旅行費用の上昇により、2泊3日とした。【四国・私立】地方の学校のため、航空機を乗り継がないと関西にいけないなど、地理的な制約が多い。旅行代金高騰により子供たちの活動が制限されることが増えている。教員の旅費の規定(上限がある)もあり、制約を受けている。【北海道・公立】航空機の価格が高騰し、生徒参加費を占める割合が高まった関係で、宿泊数や体験活動を減らす等、費用を抑える必要がある。【関東・公立】物価高騰の中、県で定められている上限金額では実施不可能な地域が増えてきている。【近畿・公立】物価の高騰、2024年問題等 以前と同様の条件では、修学旅行を実施するのが難しくなっている。保護者の多くは、一生の思い出のために経済的負担を厭わない傾向にあるが、一部不参加となる家庭もみられる。学校として、費用設定を含めて検討が必要な時期を迎えている。【近畿・私立】バスの運転手の勤務時間が限られているので、芸術鑑賞を夜に計画すると旅行費用が高くなる。【中国・公立】雪不足のため。メインのスキー・スノボード実習(1日半)が実施できず、予定を大幅に変更せざる得なかった。12月初旬の実施時期を検討しなければならないと考える。【四国・公立】新型コロナウイルス感染症のまん延以後、民泊の受入れ側が消極的になった。【関東・公立】自主研修では、12月の京都市内は非常に混みあい、公共交通機関を利用するのが難しく、事前に計画した行程を変更するなどした。予測はしていたが、予想以上だった。【東北・公立】参加生徒人数が年々増加しており、全体で移動することが困難となった。また、300名を超える宿泊先は限られており、修学旅行費用が増加している。【中部・私立】修学旅行実施そのものに対する教員の負担が著しく大きい。【近畿・私立】コロナで、中学校の修学旅行を経験していないため、生徒は旅行をイメージできない。【東北・公立】障害をもつ(車イス)生徒に対応したバスが借りられず困った。旅行会社の人手不足のためか、学校のスケジュールに合わせた話し合いができなくて、教員が困っていた。【関東・公立】少人数なので、プランを組んでくれる旅行代理店が少ない。【九州・公立】表-12 国内修学旅行の課題と問題点項目教育旅行年報「データブック2024」  23多くの学校が、修学旅行を「探究的な学習」の場として位置づけ、生徒が自ら課題を見つけ、解決していくような活動を取り入れて始めている。しかし、義務教育課程ではない高校では、費用面での支援が十分とは言えない状況で、公的支援の拡充など、より多くの生徒が参加できるような環境づくりが求められているのが伺える。 「旅行先・旅程」については、特に京都などの人気の観光地では、インバウンド客の急増による交通機関の混雑や、宿泊施設の確保困難などから、修学旅行の実施が難しくなっているという意見が多く出ていた。また、大型校では、宿泊施設や航空機の中小型化により、手配が困難になっているという課題も数多く指摘された。さらに、「2024年問題」によるバスのドライバー不足の影響で、修学旅行の行程が制約されるケースや、地球温暖化によりスキー修学旅行の実施時期の見直しといった意見もあり、社会情勢や環境の変化が修学旅行の計画に大きな影響を与えていることがわかる。 「その他」の項目では、コロナ禍の影響による旅行業界の人材不足・人手不足などにより、旅行会社の営業対応にも変化があり、修学旅行の計画・実施に影響が出ているというコメントが目立った。小規模校では入札や営業対応する旅行会社が減少し、適切なプランを立ててもらえないケースや、打ち合わせがスムーズにいかなかったというコメントも見られた。さらに、コロナ禍で生徒の集団行動の機会が減ったことで、修学旅行中の行動に不安を感じたり、不参加を決める生徒が増加したといった意見も見られた。また、修学旅行の準備や拘束時間等から教員の負担増にもつながっており、苦労しているというコメントも散見された。始まった旅行諸費用の上昇を受けて、経済的負担についてのコメントが半分近くを占めるという状況になった。 「安全・健康管理」では、コロナの5類移行後も、インフルエンザやコロナの感染により、旅行実施に際し対応を余儀なくされたとのコメントが多数あった。このことから感染症対策は、今後も修学旅行を実施するうえで重要な課題であり、これまでの経験を活かした対策が求められると言える。また、異常気象による暑さへの対応が必要とのコメントも複数あった。 「教育的効果」では、コロナ禍の影響で旅行先・内容が変更されたことにより、学年間での引き継ぎや情報共有が滞り、学校としてノウハウを蓄積し、修学旅行をより深化させる機会を失ったという意見が多く見られた。また、コロナ禍が終息に向かう中で、学習指導要領への対応が意識されるようになり、テーマパークなどの観光要素と、体験活動や探究的な学びの要素とのバランスをどう取るか、修学旅行のあり方全体を見直す時期に来ているという意見も複数あった。さらに、キャリア教育の一環として企業訪問を進める際、訪問日時の調整が難しかったという意見も散見された。 「経済的負担」に関するコメントでは、主に交通費や宿泊費の高騰が原因で、旅行先や日数、体験内容を変更せざるを得なかったケースが多く見られた。特に公立学校では、自治体の定める上限額が費用の上昇に追い付いていないため、旅行費用の上限額が現状に即していないとの意見も多くあった。また、費用増加に伴う不参加者増加の懸念や、その対策に対する悩みも多く、深刻化しているのがわかる。国内修学旅行の実態とまとめ[高等学校]

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